客単価が上がらないと悩んでいる販売業への改善提案としてよく挙げられるのが、このアップセルとクロスセルです。ここでは、それらの意味とそれらを行う具体的な方法を説明していきます。
アップセルとは?どのように行うのがいい?

アップセルとは、ユーザー側が希望している対象より上のグレードで、価格も高いものを購入してもらうことを表す販売手法です。セールス用語の1つで、例として、5,000円のものを購入しようとしている人に対し、それよりも上位になる6,000円のものをすすめることがそれに当たります。
下位互換になるものをおすすめするのがポイントです
このアップセルになる、本来購入しようと考えているものより上のグレードのものをすすめことは日常的に行われています。ですが、その際に元のものと下位互換になるものをすすめる場合と、多少違うものをすすめる場合で客側の購入意欲が結構違ってくるのです。
この下位互換とは、“大は小を兼ねる”の考え方に近く、上のグレードのものに元々購入しようと思っていたものの機能はほぼ全てある状態を表します。グレードを上げたことで使えなくなる機能はないため、元のものより間違いなくいいものだと強くアピールすることができます。
機械ものでは特に利用できます
先の下位互換は、家電などの機械ものを販売する時には特に重要な要素になります。冷蔵庫や掃除機、パソコンなど色々な対象に共通して使うことができ、元のものより機能が多かったり、効率よく使える速度があるようなものをすすめることで、購入意欲を刺激できるからです
ですが、無理に使わない機能が付いているものは必要ない、この程度の機能で十分だと返されることも多いので、その際の売り文句もきちんと考えておく必要があります。例えば掃除機だとすると、今はそちらでも十分ながら、この上位商品なら今より広い部屋に住むことがあっても十分なパワーがあるといった具合の文句になります。
あまり価格差がないことが条件です
いくら上位グレードになる商品でも、元々購入しようと考えていたものとの価格差が大きいと、そちらを購入してもらうのは難しいことが多いです。そのため、それがあまりない商品をすすめるのがアップセルにおける大切なポイントです。
1万円の商品であれば、1万3千円までがその範囲だと考えていいでしょう。この3割程度までなら機能が多かったり性能がいいことで出してもいい範囲だと考えている消費者が多いためで、さすがに5割も高くなると、購入をためらう人も多くなってしまいます。もちろん必ずしも3割に拘る必要はなく、3,000円が元の値段なら、4,000円までは十分に許容範囲です。
クロスセルとは?売り方として問題はないの?
クロスセルとは、本来購入しようと考えていたものに加えて、それと関係する別の商品も一緒に購入してもらうという販売手法になります。
関連付けをアピールするのがポイントです
このクロスセルによって別の商品も購入してもらおうと考えた時には、それといかに関連する商品なのかのアピールが大切です。衣類であれば、トップスの購入者にそれとよく似合うボトムスをすすめるのがクロスセルで、一緒に購入することでより元の商品が映える、利用しやすくなると紹介し、共に購入してもらうのです。
機械ものでは、オプションパーツのようなものを一緒にすすめることで、より使いやすくなる、作業効率が上がることが期待できるとアピールし、購入欲を煽ります。よって、各商品と関連するクロスセルに向いたアイテムがすぐに出てくるように、予め勉強をしておかないといけません。
使用例があるとすすめやすくなります
これも衣類の場合で挙げますが、ある商品とのコーディネートで構成したマネキンを置いておくことで、そのコーディネートごと欲しいといった人も出てきます。衣類以外でも、テレビと専用のテレビ台、テーブルとそれによく合う椅子を一緒に並べておくといった手法は各売り場で行われており、もちろんクロスセルに繋がりやすくなります。
この場合、クロスセルになるアイテムをすすめなくても、客側に一緒に購入したいと考えてもらうことができるので、効率よくクロスセルでの販売を行いたいならそのようなディスプレイは欠かせません。
抱き合わせ販売とは違います
クロスセルの意味としてよく勘違いされるのが、いわゆる抱き合わせ販売です。そちらはいつでも売れる人気のあるアイテムを単独では販売せず、指定の何かと一緒に購入することを強要することで、消費者庁より禁止されている販売手法です。クロスセルはあくまで関連するアイテムを同時に購入することをすすめるだけなので、違法性は全くありません。むしろ、テクニックの1つだと考えて構わないため、安心して行うことができる販売手法です。
これがうまい販売員は、必然的に客単価も高くなります。接客を伴う販売では、どんなアイテムであってもそれに関連するクロスセル商品を常に頭に入れておきましょう。